今回は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
苦境に立たされても「兄の手だけは借りない」と、グリフィンを避け続けてきたロイヤル。しかし、弟を案じるグリフィンの込み入った策略で、ロイヤルはついに、兄との「電話越しの再会」を果たすことになります。そして……?
それでは、本日もまいりましょう!
*
グリフィン「ロイヤル、おまえの話をしろ。そのために、おれはおまえを捕まえた。おれが居ない間に何がおまえを襲ったのか、そのことを話すんだ」
兄の静かな言葉を、ロイヤルは不思議な思いで聴いていました。
自分の身体の状態をグリフィンに知られたら「おしまいだ」と……ロイヤルはそう信じてきました。グリフィンの手助けを受けてしまったら……いいえ、それどころか、グリフィンの声を聴いてしまっただけで、ひとりで頑張ってきた自分の世界が崩壊する……そのくらいのことを思っていたのです。
けれど今、こうして兄の声に触れると、何故かしらほっとするのでした。
けれど今、こうして兄の声に触れると、何故かしらほっとするのでした。
ここで事情を打ち明けてしまえば、グリフィンを遠ざけ続けてきたロイヤルの努力は、水の泡。けれど打ち明けさえすれば、胸のつらさは消えるのかもしれません。
ロイヤルは迷い、躊躇い、一分もの間黙っていました。グリフィンは辛抱強く待っています。ロイヤルの唇がわなないて、苦しみの涙が滲みました。
グリフィン「泣くな」
鼻をすするかすかな音を聞きつけて、グリフィンが無造作に言いました。
ロイヤル「……泣いてない。悔しいだけだ」
グリフィン「ああ」
いつか、子供だった頃……暗い雨の午後のこと。ロイヤルが森の家をとびだして、ひとりで泣いていたことがありました。あの時も、兄は傘を差して、迎えに来てくれました。
掌で乱暴に涙を払うと、ロイヤルの気持ちは定まりました。
ロイヤル「……話すよ、今までのこと」
グリフィン「ああ」
ロイヤルは順を追って、彼自身の身に降りかかった出来事を説明しました。
アルバイト先で、ユキちゃんと出会った日のこと。運命のようにリノと引き合わされた、あの不思議な雪の夜のこと。リノがついていたウソ、彼女との闘い、そして和解。ユキちゃんの支え。……そして今、リノは元の世界に還れず、八方塞がりになっていること。ロイヤルもまた、生命の危機にさらされていることなどを。
どのエピソードも、かなり現実離れした話に聞こえるはずですが、グリフィンは一切口を挟まず、最後まで黙って聴いていました。
グリフィン「おれがおまえの力になれるのか、今はまだわからない」
兄はまず、そう釘を刺しました。
ロイヤル「うん」
グリフィン「だが、出来るだけのことはする。とりあえず、明日の朝まで持ちこたえろ。屋敷の問題が決着したら、おれはすぐそちらへ戻る。おまえの魔力がおれの魔力と同質である以上……おまえがおれの魔力を取り込めば、多少の延命は出来るはずだ」
ロイヤル「うん。おれも、そうかもしれないとは思ってた」
グリフィン「頼れ。おれのチカラを利用したところで、おまえの価値が下がる訳じゃない。誇りを傷つけられる、と思ってるかもしれないが」
まさに【ずっと悩み苦しんでいたこと】を言い当てられて、ロイヤルの呼吸がちょっと止まりました。兄はきっと、あの【感情を読み取りにくい無表情】をしているのでしょう。思い浮かべて、ロイヤルはかすかに笑いました。
ロイヤル「……グリフィンには敵わない」
グリフィン「違う。ただ、おれとおまえが、タイプの違う人間(シム)というだけだ」
ロイヤル「そうかな……」
ロイヤルの目に、また悩みの涙が滲みます。
グリフィン「ともかく明日の朝、何か助けになるものを、おまえに届ける」
ロイヤル「【届ける】?」
グリフィン「その後おれは、出来れば明日じゅうに屋敷を離れて、おまえの許に行く。おまえも力を尽くせ」
ロイヤル「そうする。……あ」
ロイヤルの身体が、またすぅっと【気体めいた半透明】に変わりました。実体を失った手から、携帯電話がすべり落ちました。
グリフィン「どうした」
ロイヤル「……なんでもない」
気体じみた手では、電話を掴んで拾うことも出来ないので、ロイヤルは床のうえの携帯電話に覆いかぶさるようにして、声を送りました。
グリフィン「そうか。じゃあ、もう切る」
ロイヤル「待って……!グリフィン、待ってくれ!」
とつぜん心細さに駆られて、ロイヤルは必死に呼びました。
グリフィン「聞いてる」
ロイヤル「……グリフィン。おれ、リノを助けられると思う?おれが生き延びて、リノもこの世界で平和に暮らして、全部がうまく行くと思う?」
電話の向こうで、兄は五秒沈黙しました。
グリフィン「救えるものと、掬い切れないものがあると思う。その差を見極めるのは、簡単じゃない。……だから、出来ることをする。明日を待て」
切るぞ、と言い残して、電話は本当にあっさりと切れました。薄情なようにも見えますが、グリフィンは弟を助けるために、何か行動を始めようとしているのです。
ロイヤルは半透明の身体で、床のうえにうずくまりました。短い間にいろいろなことがあって、今はなんだかぐったりしています。けれどついに、彼は兄の手を取ったのです。
ロイヤル「……やっぱり、グリフィンは兄さんだ」
ロイヤルはそう言って、笑いました。
つづきます……!
*
(今回のポーズは、すべて自作です)
今回も、たくさんのMOD・CC・ギャラリー作品のお世話になりました。
Thanks to all MOD/CC ceators and all builders!
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