弱くても、また始めるから

こんにちはー。

本日は、また「ロイヤルと裸足の魔女編」ですー。
少女レイニーの信頼を勝ち取り、これまで彼女を救おうと奮闘してきたグリフィンの物語が終わろうとしています…。今回は再び、視点をロイヤルに戻します。兄・グリフィンに、自分の窮状を知られてしまったロイヤル。電話を切り、兄を拒むロイヤルは、何を思うのでしょうか…？

それでは、本日もまいりましょう！

＊


ロイヤル・バーンウッドは、逃げ回っていました。

何から？

【兄・グリフィンによる追及から】です。

ユキちゃんのおうちで映画鑑賞会が開催されたのは、昨日の夜のこと。グリフィンから電話が掛かってきて、ユキちゃんが彼にロイヤルの窮地を打ち明けてから……半日が過ぎていました。

そうして、また朝日が昇り、新しい一日がやってきます。


ロイヤル「おはよう、トト」

ロイヤルはほほえんで、忠犬の頭に鼻をうずめました。
普段なら、彼は目が覚めるとまず、携帯電話に手を伸ばします。シムスタグラムを見たり、ちょっとゲームをしたりして、頭を冴えさせてから生活を始めるのです。しかし……


しかし、この日。

彼の携帯電話は棚のうえに載せられたまま（しかも「機内モード」に設定されたまま）顧みられることはありませんでした。【ロイヤルの現状について詳しい説明を求めようと、グリフィンからまた電話が掛かってくるのではないか……？】ロイヤルは、そのことを何よりも恐れていました。

ユキ（ロイヤル、お兄さんの強い腕のなかから抜け出すだけのために命を懸けるのは間違ってると、わたしは思う……！それで命を落としたら、ロイヤルは本当にお兄さんに負けて死んだことになってしまう……）

昨夜のユキちゃんの言葉が、ロイヤルの耳に甦ります。


ロイヤル（……子供の頃、蝶がさなぎからかえるのを見たことがある。蝶って、さなぎから出た時は翅（はね）がしわくちゃに固まってて、それを伸ばして乾かしてから、飛び立たなくちゃいけないんだ。でも……その時、おれが見た蝶は、翅を乾かすために草のてっぺんまでのぼろうとして、うまく行かずに転がり落ちた。再び起き上がる前に、翅はしわくちゃにねじれたまま、乾いて固まってしまった。どうすることもできずに動けなくなって、蝶は死んだ。大人になることに失敗して、死んだんだ）

ロイヤル（……おれがグリフィンにこだわって、グリフィンを拒みながら消滅するのは……あの蝶と同じになることかもしれない）

自分の考えに深く沈み込みながら、ロイヤルは……


食事を終えて……


お皿を片付け……


ベッドに横たわりました。

少し身体を動かしただけで息が上がり、血の気が引きます。ロイヤルの魔力は、いよいよ欠乏しているようでした。

ロイヤル「動いたら気持ちがスッキリして、状況をひっくり返すような……グリフィンにしがみつかなくても全部うまく行くような、良い考えが浮かぶかと思ったけど……ダメだな……。いい加減、グリフィンのことばっかり考えるのも、やめたいしさ。ユキは【お兄さんのような魔法使いを頼れ】って言ってくれたけど、魔法使いなんてグリフィン以外にも山ほど居るんだし。……こんな日に限って、バイトも休みだしなぁ」

行動的なロイヤルは、猛然と働いている時にこそ、頭がクリアになるタイプです。
とは言え、彼の体調を見た限り、アルバイトどころではないという気もするのですが……、彼はあくまでも、あたりまえの日常を続けようとしていました。

ロイヤル「どうして、急に電話が来たのか」

彼は、ふいに言いました。


ロイヤル「どうして急に、グリフィンが電話を寄越したのか……なんとなく考えてた……。考えてみたら、拍子抜けするような答えだった。おれ、昨日の午後、ウィンデンブルグへ行くバスのなかで、グリフィンにメールを送ったんだ。グリフィンの蔵書を覗いてもいいか、訊きたくて……。もしかすると、その答えをくれようとしてたのかもしれない。グリフィンが屋敷に帰ってから、おれたち一度も話してないし……、おれの様子を気に掛けてくれてたのかも」

ロイヤル「それで、わざわざメールじゃなくて、電話をくれたんじゃないかな？グリフィンは、ほら、兄貴だから……おれに責任があると思ってるんだよ」

兄の心中を思いやると、ロイヤルの顔が優しくなりました。

ロイヤル「いつまでも、携帯電話を封印している訳にもいかないよな。だいいち、グリフィン以外にも、メールとか来てるかもしれないし」


勇気を出して、背筋を伸ばして、ロイヤルは電話を手に取りました。彼が画面をタップしている間、沈黙がありました。

ロイヤル「あ……」

思った通り、グリフィンからメールが届いていて、ロイヤルは身体を硬くしました。何秒かかけて心を決めたあと、深呼吸をして……メールを開封します。

ロイヤル「…………」

兄の文章を見ながら、ロイヤルは黙り込んでいました。


グリフィン【本棚なら、好きに見ろ】

メールには、それだけが書かれていました。

つづきます……！

＊

今回のポーズ

SSの7枚目（寝ているロイヤル）

以上1枚のポーズは、
新生まるきぶねスローライフ 様
よりお借りしました。いつもありがとうございます。

SSの8枚目（ロイヤル、俯瞰）

以上1枚のポーズは、自作です。

今回も、たいへん多くのMOD・CCのお世話になりました。
すべてのクリエイター様に、心より感謝しております！
Thanks to all MOD/CC creators!




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